今回は私がエナジードリンクよりもコーヒーを勧める理由について書いていきたいと思います。
眠気覚ましにエナジードリンクをよく飲んでいる
勉強や運動のパフォーマンスを上げたい
エナジードリンクは健康に悪いのではないか心配
エナジードリンクはパフォーマンスを上げない
まず、結論から書きますと、エナジードリンクはパフォーマンスを上げません。
エナジードリンクを勉強や運動前にパフォーマンス向上のために飲む方も多いと思いますが、興味深い文献、書籍があります
最初に紹介するが、コロンビアの文献です。
要約すると
コロンビア軍の14人の男性ボランティア兵士を対象に、以下の飲料に対しての心肺機能や集中力を測定するためにさまざまなテストを実施し、比較検討した試験です。
- カフェインが80mgが入った飲料
- タウリン1000mgが入った飲料
- カフェイン80mとタウリン1000mgが入った飲料
- 市販のエナジードリンク(レッドブル)
- プラセボドリンク(カフェイン、タウリン含まない)
※すべての飲料は、風味および他の感覚刺激特性が市販のものと一致し、暗いプラスチックボトルに瓶詰めされ、参加者に同一の条件で投与されました。
結果としては、カフェイン(80mg)とタウリン(1000mg)またはそれらの組み合わせの消費は、運動中の若い成人の身体能力と認知能力を増加させません。
ドラッグストアで栄養ドリンクの販売促進用のPOPに、「タウリン2000mg配合で2倍効く」などと、声高らかにうたっていますが、根拠が無く全く意味がないのです!!
エナジードリンク1本ではカフェイン量が少ない
カフェインの量について複数の文献を調べたところ、運動パフォーマンスを高めるには、少なくとも体重1kgあたりカフェインを3mgを摂取することが推奨されています。
体重60kgの方なら、カフェイン180mg、コーヒーなら約300mlとなります
つまり、エナジードリンク1本ではカフェインが少ないのです。
(下記イラスト参照)
ただし、カフェインに耐性のない方がいきなりカフェイン180mgを摂取すると動悸、頭痛、吐き気、不眠、不安などの中毒症状が出る恐れがありますので、少量から試した方が良いでしょう。
また、目的に合わせた摂取量があって、運動パフォーマンス向上には運動1時間前に3mg/kg体重摂取、注意力。集中力の向上には75mg以上、持久運動時の主観的労作の軽減には運動1時間前4mg/kg摂取が良いとのことでした。
注意力・集中力の向上(75mg以上摂取)」や「持久運動 パフォーマンスの向上(運動1時間前に3mg/kg体重摂取)」 「持久運動時の主観的労作の軽減(同4mg/kg体重)」は ヨーロッパでは科学的根拠が十分にあると見なされ、ヘルスクレーム(食品での機能性表示)が認められています。
出典 EFSA J (2011) 9: 2054 EFSA J (2011) 9: 2053
また、カフェインを摂取する目的だけあれば、エナジードリンクよりもコーヒーの方が効率がいいのです。さらに、ブラックコーヒーであれば過剰な糖分を取らずに済みます。
エナジードリンクでむしろ眠くなる
次に、わが国で販売されている書籍からの紹介です。
エナジードリンクは多くの糖分を含んでいるので急激に血糖値を上げ、一時的に脳を活性化させることができます。しかし、急激に上がった血糖値はその反動で再び血糖値が下がり始めます。すると急に、眠気や集中力の低下、イライラなどが起こります
出典:集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方
著者: 井上一鷹
むしろ飲まない方が良いのではと感じました。
眠気覚まし目的で飲むのであれば血糖値を上げにくいブラックコーヒーの方がおすすめです。
カフェインを摂取するタイミングについては別の記事にしていますのでご参照ください
エナジードリンクは糖尿病のリスクになるが、コーヒーは予防効果がある
急激な血糖上昇はインスリンの分泌を促進するため、糖尿病のリスクになるうえ、肥満の原因になります。エナジードリンクに含まれる糖分は血糖値を急激にあげてしまうのです。
一方、コーヒーの摂取により、糖尿病の発症が抑制されるという報告は多数あり、九州大学大学院医学研究院予防医学分野教授の古野純典先生の話によれば、コーヒーが糖尿病発症のリスクを下げる効果は複数のメタ解析により分かってきたとのことでした。
メタ解析とは,信頼性の高い結果を求めるために,同じテーマについて複数の研究から得られた結果を統計的な手法 を使って統合する研究方法です。
コホート研究(大規模な対象集団を設けて食習慣やコーヒー飲用を調査した後に,糖尿病の発生を長期にわたり観察するタイプの疫学研究)を中心とした観察タイプの研究結果から,コーヒーに2型糖尿病の予防効果があることはほぼ間違いないとのことでした。
古野純典先生は以下の論文を紹介していました。
Van Damらは,コーヒーを1日4~6杯 飲む人は,1日2杯以下の人に比べて2型糖尿病発症のリスクが28%下がると報告しています。
2009年のHuxleyらによる18本 のコホート研究をメタ解析した論文では,コー ヒーを1日3~4杯飲む人は,1日2杯以下の人に比 べて2型糖尿病発症のリスクが24%下がるという結果でした。
また、欧米では広く飲まれているカフェイン抜きのデカフェ・コーヒーでも,カフェイン入り のコーヒーと同様に2型糖尿病発症のリスクが下 がっていました。
コーヒーに豊富に含まれるクロロゲン酸類などのポリフェノール(抗酸化物質)が働いているのかもしれないと考察されていました。
出典 ネスレなぜなに「コーヒーと健康」専門家インタビュー記事シリーズ
エナジードリンクの方が危険?
若者たちに広がるカフェイン中毒。事態のさらなる悪化を懸念している専門家がいます。
カフェインの薬理作用の研究を長年行ってきた栗原教授です。栗原先生が危惧しているのは、エナジードリンクなどのメーカーがカフェインの覚醒効果の増強を次々に打ち出していることです。
覚醒剤やコカインのような「アッパー」と呼ばれる興奮系の薬物の一種であるカフェイン。
しかし、興奮作用ははるかに弱いとされています。
ところが、最近の研究でカフェインにアルギニンという成分を加えると脳内の興奮作用がより強まるという治験が得られたのです。
こうした研究結果は、新たな商品開発に生かされると見られています。しかし、栗原先生は覚醒効果が高まれば、中毒性や依存性も強まるのではないかと懸念を示しています。
単純にカフェイン量だけでは効果の目安にはならないのです。
カフェインの摂りすぎに注意
これまで眠気冷ましにはエナジードリンクよりも、コーヒーの方がいいとお伝えしてきましたが、カフェインの摂りすぎに注意してください。
カフェインによる眠気覚しはよく「元気の前借り」といわれており、一時的に元気になりますがその後2倍、3倍の疲れがどっと出るとも言われています。
適量(1日3−4杯程度)であれば問題ないのですが、大量のカフェインを常用するのは危険です。あくまでここぞという時だけにしておく方が無難でしょう。
睡眠不足が続くのが体に良いわけがありませんよね。
また、お子さんへのカフェインの過量摂取にも注意しなければなりません。
カナダでは、子どもへのエナジードリンクの販売や試供品の配布を禁止。そして、法律で18歳以下への販売を禁止した国もあります。
カフェインの量についてば別の記事にしていますのでご参照ください。
カフェインは耐性が生じる
プリンストン大学のコンピュータサイエンスの教授であるArvind Narayana氏によれば、カフェイン耐性はかなり急速に(2〜3週間)生じ、完全に耐性ができるとのことです。
この状態だと、カフェインを飲まないと逆に頭がぼんやりするとのことでした。
これに対して、短期的戦略としては、1日に2杯のコーヒーを飲むというもの。
1杯は午前中に、2杯目は午後の昼寝のあとです。
長期的な戦略としてはコーヒーを7-10日断つことと言っています。
つまり、コーヒーを飲むタイミングと寝ることが重要だということです。
日本の飲料メーカー、ダイドードリンコの昼寝の前にコーヒーを飲用し、15 分間の昼寝を推奨する「カフェインナップ」という取り組みはあながち間違いではないという事になります。
「昼寝の後」、「昼寝の前」で違いがありますが、コーヒーに含まれるカフェインの覚醒作用は、飲用後 20~30 分後に現れるため「昼寝の前」が良いかもしれません。
カフェインナップについては最初に紹介した記事でも紹介しています。
まとめ
- エナジードリンクはパフォーマンスを上げない
- 運動パフォーマンスを上げるためにはカフェインを180mg程度は摂る必要がある
- エナジードリンク1本ではカフェイン量が少ない
- エナジードリンクでむしろ眠たくなる。
- エナジードリンクで糖尿病や肥満のリスクも高まるがコーヒーには予防効果がある
- エナジードリンクの方が危険である可能性がある
- カフェインの摂りすぎに注意
- カフェインは耐性が生じる
ただし、無理は禁物ですよ。
眠たい時は寝るに限るです。
効率重視で行きましょう!